【受験生必見】東大生が教える文系の進振り事情

【受験生必見】東大生が教える文系の進振り事情

はじめに

「文一に入らないと法学部には行けないのか」

「文三から経済学部や法学部を目指すのは難しいのか」

「まだやりたいことが決まっていない自分は、どの科類を選べばいいのか」

「進振りについて調べてみたけれど点数って実際どれくらいとれるの」

 このような不安を持ってる受験生は多いのではないでしょうか。

 私も受験生時代、明確なやりたいことが決まっていないうえに現役志向だったため、どの科類に出願するか非常に悩みました。合格最低点が最も低くなる傾向にある文科三類に出願するか、文科三類は進振りで必要な点数が高いということで他の科類に出願するか。似たような悩みを抱えている受験生の方は多いのではないでしょうか。周囲に東大生の先輩はほとんどおらず、ネットで進振りについて調べても内部の詳しい情報は少なく、東大入学後が不安だったことを覚えています。

 この記事では、多くの受験生が抱く「科類を選んだら、その後の進路は決まってしまうの? 」といった進振り制度に関する不安と、「東大生同士で競争して高い成績なんか取れるの? 」といった進振りの実情に関する不安に答えていきます。進振りの仕組みや進学の流れをきちんと知ることで、後悔のない進路選択ができるようになるはずです!

不安①:進振り制度に関する不安「科類を選んだら、その後の進路は決まってしまうの? 」

そもそも「進振り」って何?

 不安①「科類を選んだら、その後の進路は決まってしまうの? 」にお答えするために、まずは進振り制度について解説します。

 進振りとは、一言でいえば「2年生までの成績(基本平均点)を使って、3年生から進む学部・学科を決める、東大特有の制度」です。 

 東大では、入試の時点で学部を決めるのではなく、まず文科一類・二類・三類などの「科類」を選択して受験します。入学後、1年生はまず前期教養課程で分野を横断して学びます。ヒンディー語や宇宙科学、ボーカロイド音楽論からタイの古式マッサージまで多種多様な分野を科類関係なく学ぶことができます。そして2年生の途中にある「進学選択(通称・進振り)」で、成績などをもとに進学する学部・学科が決まります。事前にガイダンスや研究室訪問も行われるので、興味関心や将来的なキャリアをじっくりと考えた上で学部学科を選択できるのが進振りの魅力となっています。

 つまり、受験時に選ぶ科類によって、最終的に進学する学部が必ずしも決まってしまうわけではありません。一方で、どの科類からどの学部へ進みやすいか、進振りでどの程度の成績が必要なのかは科類によって大きく異なっているのです。

科類ごとに進学しやすい学部が違う!

 受験時に選ぶ科類と、最終的に進学する学部は必ずしも同じではないことは分かりましたか? ただし、学部ごとに特定の科類から優先的に受け入れる枠(=指定科類)が設けられているため、科類ごとに進学しやすい学部や、進学者が多い学部が異なります。傾向としては次のようになります。

  • 文一:法学部への枠が最多で基本的に法学部へ進学することができます。
  • 文二:経済学部への進学者が多い科類です。ただし、経済学部に割り当てられている進学枠は文二全体の約4分の3のため、それなりに成績をとっておく必要があります。
  • 文三:文学部や教育学部への進学者が多い科類です。特に文学部の心理学科・社会学科・社会心理学科、教育学部の比較教育社会学コース・教育心理学コースなどは人気が高く、進学に必要な成績が高くなる傾向があります。

 特殊なのが後期教養学部です。後期教養学部は分野横断的に学べる学部として位置付けられているため各科類から志望者が集まります。しかし、募集人数が少ないため競争が激しく、必要な成績が高くなる傾向があります。また、基本的には文三から法学部や経済学部、後期教養学部へ進学するには文一から経済学部や後期教養学部、文二から法学部や後期教養学部へ進学するよりも高い成績が必要になります。

 一方、文系から理系学部を目指す「理転」の場合も、同様に難関となります。理転の場合には文一・文二・文三のどの科類からであっても、出身科類を問わない共通の定員枠(=全科類枠)をめぐって競い合うことになるためです。

実際進振りってどれくらい活用されているの?

 進振りについては分かったけれど、本当に活用されているのか気になっている方も多いのではないでしょうか。実際のところ、文系では多くの学生が進振りを活用して、自分の科類の主要進学学部以外の学部に進学しています。 あくまで私個人の体感ですが、全体の1割以上が進振りで科類ごとの主な進学先外に進学している印象です。

 私は文三に所属しているのですが、私のクラスではクラスの4分の1が文学部や教育学部以外への進学を目指しています。特に法学部や経済学部、後期教養学部を目指している学生が多いです。他にも、文一から法学部ではなく経済学部や文学部に進んだ学生、文三から建築学科、情報系の学科に理転した学生など、進振りを活用して入学後に進路を変えた・決定した学生が数えきれないほどいます! 

 理系学部の中には、理系の必修科目を履修していなくても、文系生が全科類向けに用意された進学枠を利用して理転できる場合があります。ただし、文科生が理系学部へ進学するには理系必修の追加履修が必要になることが多いほか、そもそも文科生は進学できない理系学科も存在するため注意が必要です。

 長くなりましたが、「科類を選んだら、その後の進路は決まってしまうの?」という不安①にお答えすると、「東大では入学した科類で進路が固定されることはありません。どの科類からでも様々な進路を目指すことができます。ただし、科類ごとに進学しやすい学部があり、定員が少ない学部学科や人気の学部学科では進学するために必要な成績が高くなる傾向があります。」ということになります。

不安②:進振りの実情に関する不安「東大生同士で競争して高い成績なんか取れるの?」

学部・学科ごとにどれくらいの成績が必要なの?

 「進振り制度については分かったけれども、優秀な東大生同士で競争して、高い成績なんて取れるの?」  と不安に思った方も多いでしょう。そこでまず、成績とは具体的にどの程度のものかイメージしやすくするために、進振りで使われる成績についてご紹介します。

  進振りで使われる成績は「基本平均点」と呼ばれる100点満点換算の学業成績です。 進振りでは、志望する学部・学科の中で、基本平均点が高い学生から順に内定していく仕組みになっています。 

 では、実際にどのくらいの点数が必要なのか。目安としては進振りで人気の高い学部学科を目指すなら80点は欲しく、85点あれば確実に進学可能と言われています。近年の傾向としては文三から法学部や経済学部へ進学するには70点台後半、後期教養学部へ進学するには80点台前半が必要になっています。ただし、学部・学科ごとの内定者の最低点は大学から公表されていません。さらに、先ほどご紹介したように、後期教養学部や理系学部の文系枠等、定員が少ない学部学科では年度によって必要な基本平均点が大きく変動するため注意が必要です。 

東大生同士で競争して高い成績なんか取れるの?

 ここで改めて、「東大生同士で競争して高い成績なんか取れるの?」という不安にお答えします。 先ほども述べたように、過度に不安になる必要はありません。私がこの記事で最も伝えたいことは天才でなくとも、きちんと勉強すれば80点は獲得できるということです。理由としては大学入学後に勉強しなくなる学生が一定数いたり、後でご紹介しますが、様々な戦略で試験の得点や基本平均点を上げることができるからです。実際に多くの友人が第一志望の学部学科への進学を実現しています。 

 私自身の体験談で言うと、私はもともとリスニングが苦手で、東大入試でも「配点の半分取れれば御の字」というレベルでした。ところが、入学後に履修しなければならない英語の授業の内容がまさにリスニングでした。周りの学生の発音が綺麗でリスニング問題を解くスピードも早く、「私がクラスで最低点を取ってしまうんじゃないか」ととても焦ったことを覚えています。とにかく毎回の授業に時間通り出席して、板書をメモし、授業で扱った音声を繰り返し聴くという努力をしたおかげか、期末テストでは80点台を獲得することができました。そのクラスの上位3割に入ることができたのです。

 以上を踏まえて、「東大生同士で競争して高い成績なんか取れるの?」という不安への答えは、「入試の点数が低くても、天才でなくても、入学後の努力と戦略次第で十分に高い点数を取ることができる」ということです。ただし、優3割規定※の影響もあり、85点以上の学生は多くありません。そのため、確実に高い成績を取りたい場合は、しっかりと戦略を練って勉強する必要があります。

※成績評価で100点満点中80点以上の点数とする学生の人数を、その授業全体の履修学生数の上位3割以内とする制度のこと。履修者が20人を超える授業で適用される。

後悔のない進学選択のすすめ:科類を選ぶ際に受験生ができること

 ここまでで、進振りの仕組みや、入学後の努力次第で志望する学部へ進学できることはイメージできたかと思います。 このパートと次のパートでは、そうした理解を踏まえて、 後悔のない進学選択のために受験前と入学後にできることをそれぞれご紹介します。

①興味のある学部・学科を挙げよう

 まずは興味のある学部・学科を探しましょう。「弁護士になりたい」、「心理士になりたい」といった将来の夢から逆算して考えるのも一つの方法ですし、まだ夢が決まっていない人は「面白そうだと思える分野」から広く調べていくのでも大丈夫です。 

 この際に重要なのはできる限りいろいろな学部を調べることです。「法学部に入って弁護士になったら稼げそう」、「文学部は本ばかり読むんじゃないの」といったなんとなくのイメージで学部を絞ってしまっていませんか。実際のところ弁護士になるには3000~8000時間の勉強時間が必要と言われていて覚悟が必要ですし、文学部では倫理学やジェンダー論など文学以外に様々な分野を扱っています。十分に調べることなく進路を決めてしまうと、「思っていた学部と違った」「自分が学びたい・面白そうな内容を扱っている学部があったのに知らなかった」という後悔につながりかねません。それを防ぐためにも、まずは是非東大の各学部の公式ホームページをチェックしてみてください。

 ただ、シラバスには「○○論」と書かれているだけで何を学ぶのかイメージしづらいですよね。そんな皆さんにおすすめなのが 「高校生と大学生のための金曜特別講座」です。東大教員が学問の面白さや重要さなどを高校生の皆さんにもわかりやすく解説するのをオンラインまたはアーカイブで視聴することができます。本当に多種多様な分野の講座が開講されているので進路選択に迷っている皆さんに非常におすすめです!

②戦略的に科類を決めよう

 先ほど紹介したように、科類ごとに進学のしやすさには違いがあります。もちろん、最も良いのは 自分が進学したい学部に進みやすい科類を志望することです。しかし、受験生の皆さんはそれぞれ抱える事情があることでしょう。「東大に進学できれば学部は何でも良い」、「親が浪人を許してくれない」といった理由で、合格可能性を少しでも高めるために合格最低点が低くなる傾向にある文三を志望するという選択も、戦略の一つと言えるでしょう。ただし、「とりあえず」で文三を志望することは絶対にやめましょう。科類選択は入試のためだけでなく、大学に入ってからの学び方や努力の継続まで見越して考えることが大切です。 人によっては、部活動やサークルに熱中して勉強の時間が取れなくなることもあります。後悔しないためにも、「自分は大学でどんな生活を送りそうか」まで含めて考えてみてください。

 また、先ほどご紹介したように、文系科類の中で「どの科類が理系に進学しやすい」という差はありません。強いて言えば文三は様々な学部への進学を目指す学生が多く、高い点数を争う傾向にあります。競い合う環境だからこそ質問したり高め合えるというメリットもあるでしょうし、逆にクラスで受ける授業で高得点を取りにくい可能性もあります。こうしたことを考慮して受験科類を決定しましょう。

後悔のない進学選択のすすめ:入学後できること

 次に入学後にできることをご紹介します。

① 情報を集めよう

 気になる分野の授業を実際に受けてみる、進学ガイダンスや研究室訪問でどんな研究をしているのかを聞いたり、雰囲気を感じたりする、先輩から学科の様子を聞くなどしましょう。特に理系学部が気になっている場合は、進学条件を必ず確認しましょう。

 駒場キャンパス内にある進学情報センターでは各学部ごとの志望者の点数分布を過去数年分確認できます。さらに、進振り前には第一志望の学部学科の調査が行われるので、志望学部における自分の位置付けや志望学生の基本平均点の分布を事前に確認することができます。※非公式ですが独自に底点を調査した雑誌を販売している団体もあります。

②戦略的に履修を組もう

 出席点が重視される、期末テストだけで成績が決まるなど授業によって評価方法は大きく異なります。自分の得意・不得意を踏まえて履修を組むことで、無理なく高い点数を取りやすくなります。学内で教員の評価の厳しさをまとめた冊子が販売されていて、それを参考に履修する授業を決める学生が多い印象ですが、自分の興味のある授業の方が成績が取れるという学生もいるので自分に合った履修方法を考えて履修を組みましょう。

 なお、履修選択について過度に心配する必要はありません。東大では入学後、上の学年の先輩が履修相談に乗ってくれる機会がしっかりと用意されています。履修や高い基本平均点の取り方に詳しい学生は1人は周りにいるのでぜひ相談して見てください!

③戦略的にテスト対策をしよう

Step1.注力すべき科目を選定しよう

 まずは1年生全員が履修する「必修科目」で確実に高得点を狙いましょう。必修科目は基本平均点を大きく左右します。特に第二外国語は成績全体を左右しやすい重要科目です。全員がゼロからのスタートであり、教員によっては成績評価の制限(優3割規定など)を撤廃している場合もあるため、努力次第で差をつけられる最大の狙い目だと思います!

Step2. 試験傾向からの逆算しよう

 次に、ゴールとなる試験の形式を正確に把握して学習計画を立てましょう。なぜなら、大学の試験は単に机に向かって授業スライドを暗記するだけでは点数が取れないことが多いからです。例えば、毎年同じ傾向の問題が出る講義であれば、先輩から過去問の情報を集め、頻出範囲へ優先的にリソースを割くのが最も効率的です。自身の考えを構築させる論述、理解度を問う記述、単語の穴埋めなど、出題形式に応じた適切な対策を進めましょう。

Step3. ツールを活用して学習を効率化しよう

 次に効率の良い勉強法を取り入れてみましょう。大学生になるとサークル活動やバイトで忙しくなり、なかなか勉強時間が取れない人も多いです。生成AIを活用し、専門性の高い授業のスライド要約や概念の噛み砕き、模擬試験の作成を行わせると、効率的に理解を深めることができます。また、東大では各クラスに「試験対策委員(※通称シケタイ)」が設置されていて、分担して授業のまとめや予想問題を作成する文化があります。試験対策プリントを参照して勉強したり、シケタイに質問する方が単独学習よりも圧倒的に効率よく知識を定着させることができるはずです。

おわりに

 今回の記事では進振り制度、特に文系の進振り事情について詳しく解説しました。東大ではどの科類からでも様々な進路を選択することができます。そして、入学後の努力や履修の工夫で必ず高い成績を取ることができます。要するに1番伝えたいことは「過度に不安になる必要はない」ということです。

 ただ、科類によって進学しやすい学部や必要となる点数には違いがあります。だからこそ、少しでも後悔のない進路選択をするためには、早めの情報収集と見通しがとても大切です。もしまだ進路を決めきれていないなければ、今日のうちに気になる学部を一つだけでも調べてみるところから始めてみてください!

 この記事が、皆さんが進路を考えるうえで少しでも力になっていたら嬉しいです!

 最後まで読んでくださりありがとうございました!

FairWindは地方高校生の進学支援をしている、東京大学の学生団体です。